Linux系のハンドヘルドの醍醐味のひとつは、CFW(カスタムファームウェア)を導入して、環境を自分の好みに仕上げられる点です。ハードウェアが良くても、OSやUIの作り込み次第で使い心地は別物になります。
前回レビューした TrimUI Brick Hammer は、筐体の質感や操作感を含めてハードウェアとしての完成度がかなり高い1台でした。
だからこそ、OSも最適化して細部までこだわることで使用感が向上し、さらに最高の相棒に近づくはずです。

ただし、TrimUI BrickのCFWは選択肢が多く、情報も断片的で「最適解」が見えにくいのが現状です。
いざ調べ始めると、KNULLI / NextUI / muOS など候補がいくつも出てきて、結局「TrimUI Brickには何を入れるのが正解なの?」と迷いました。
そこで今回は思い切って身銭を切り、CFWごとにSDカードを分けて用意。
同じ条件で実機検証を行い使い勝手を比較します。最後に、個人的な結論として「結局どれが一番おすすめか」までハッキリ出したいと思います。
StockOS(標準FW)の不満点
TrimUI BrickやTrimUI Brick Hammerにデフォルトで導入されているFW(ファームウェア)は、StockOSです。ぶっちゃけると、このStockOS自体がOSとしての完成度がそこそこ高いため、普通にゲームをプレイする面では特に支障はなく、むしろかなり使いやすい部類に入ると思います。
それでもあえて不満点を挙げるとするならば、
- シンプルというより簡素で味気ない
- ファイル管理の手間がかかる
- 最初からPortMasterが利用できない
といった細かく致命的な欠点ではないものの、もう少しデザイン性や利便性が向上できたら、より使いやすいのになと思う点がありました。
比較対象とするCFWの一覧
ここからは、今回比較するCFWの一覧と、それぞれの概要を簡単に紹介します。
比較対象は muOS / NextUI / KNULLI の3種類です。
本当は CrossMix も入れて比較したかったのですが、現行のCrossMix-OS ver1.3.0は TrimUI Brick非対応 とされており、TrimUI Brick向けの正式対応(v1.4.0以降が想定)が出たタイミングで追記し、比較対象に加える予定です。
muOSの特徴
muOSはSDカードにOSイメージを焼いて導入するCFWです。インストール後は直感的に使いやすいシンプルなデザインをしています。
またテーマの拡張性が幅広く、ユーザーコミュニティの間でテーマ開発が活発で、好みのテーマを導入したり自分オリジナルのテーマを作ったりもできます。本体をWi-Fi接続することで、気に入ったテーマを直接ダウンロードして、すぐに使用することも可能です。

標準ではBluetoothに非対応ですが、追加アプリの導入により機能として実装が可能のようです。
メリット
- テーマが豊富で自分の好みのUI画面に切り替えられる
- ファイルマネージャーアプリがデフォルトで存在
- SFTP+WebUIにより、PCにSDカードを挿さずにLAN経由でデータ管理が可能
- PortMasterに対応
デメリット
- LED制御に関してはStockOSに比べて調整できる幅が少ない
- LEDホットキーがTrimUI Brickには非対応
- Bluetoothは標準で非対応のため、利用には別途追加アプリの導入が必要
NextUIの特徴
NextUIはMinUIからフォークしたCFWで、TrimUI Brick/TrimUI Smartシリーズに特化したCFWです。特徴的なのはミニマルなUIを採用しているため、最低限の描画表示や機能構成ですがモダンでシンプルなCFWです。TrimUI用に開発されたCFWで、MinUIであった遅延問題等が解消されています。
また、ベースのMinUIにも搭載されている機能の「+Pak」を使って追加の機能やエミュレータを追加していく形をとっており、NextUIの標準機能に対して+αの機能を自分で追加していくことで好みのカスタマイズが可能です。
メリット
- ミニマルでシンプルながらも洗練されたUI
- 低遅延かつMinUIであったティアリングの解消
- +Paksを使用して追加機能のカスタマイズが可能
- Bluetoothに対応
- FTPに対応しており、PCにSDカードを挿さずにLAN経由でデータ管理が可能
デメリット
- ランチャー画面(メニュー表示)が日本語に非対応
- 最低限のエミュレータしかなく、遊ぶゲームによっては追加で導入が必要
KNULLIの特徴
KNULLIはBatoceraがベースとしているCFWで、フロントエンドにEmulationStationを採用しています。そのためテーマのデザイン性が非常に高く、ややレベルの高い設定が必要にはなりますが、ゲーム選択画面で自分で指定した動画や音楽を流すことが可能です。
ゲームアートワークやスプラッシュスクリーンの設定を少し触ってみましたが、ここにこだわると時間が溶けます。本来の目的であるゲームを遊ぶというより、「ボクが作った最強のEmulationStation環境!!」を実現するためのOSって感じでした。
ゲーム起動がとにかく遅いので、サクッと遊びたい人にはあまり向かないOSです。
メリット
- EmulatiorStationでカスタマイズするデザイン性の高さ
- PortMasterに対応
- Bluetoothに対応
- SMBやSCPに対応しており、PCにSDカードを挿さずにLAN経由でデータ管理が可能
デメリット
- システムの起動が遅い
- ゲームの起動が遅い
- スリープへの移行が遅い
比較するうえでの前提条件
検証環境
- SDカード:すべてのCFWにおいてSAMSUNGの128GBのA2規格のものを使用
- 標準のStockOS FWに関しては1.1.1(2025/11/26更新版)を使用
- CFWのバージョンは全て2025年12月時点で最新のものを使用
- プレイするゲームはGB/GBC/GBAに限定
上記とします。
SDカードに関しては以下のものを使用しています。各CFWの注意書きで「高品質のSDカードを使用してください」と明言があります。TrimUI Brickに付属してくるSDカードだと破損する可能性があるため、新しくSDカードを用意したほうが無難かと思います。
最初の3つに関しては異論がないかと思いますが、最後のプレイ比較するゲームは私のよく遊ぶゲーム環境上として指定させていただきます。N64やPS1などはプレイの想定に入っておりませんし、その他SEGA系のゲームもあまり遊びませんので、今回は検証対象から外しております。
比較したゲームについて
- GBソフト「ポケットモンスター赤」、「メトロイド2」
- GBCソフト「ゼルダの伝説 不思議の木の実 大地の章」、「ポケットモンスター クリスタル」
- GBAソフト「星のカービィ 夢の泉DX」、「ポケットモンスター エメラルド」 等
上記ソフトを使って、普通にプレイして変な挙動がないかを確認しています。ただ、GBAのカービィだけはゲーム内のミニゲーム「刹那の見切り改」でフレームの遅延チェックしてました。
評価項目
評価項目としては以下の内容をもとに比較しようと思います。ぶっちゃけここが一番迷いました。なんといってもそれぞれのCFWで個性やクセが違うので比較項目を決めるのが難しかったです。
- CFW導入のしやすさ:SDカードにD&Dするだけか、イメージを焼く必要があるか
- 起動時の早さ:初期起動/スリープからの復帰など
- デザイン性の良さ:テーマの充実度やカスタマイズ性の高さ
- ファイル管理のしやすさ:SDカードをPCに挿さずともファイル管理ができるか
- LEDの設定の幅広さ:LEDをどこまで細かく制御できるか
- PortMasterへの対応:標準でPortMasterに対応しているか
- メニュー画面のUIの使いやすさ:システム設定や
- ゲーム中の設定のしやすさ:セーブ&ロードやシェーダーの設定等
- ゲーム中の不具合の有無:遅延やバグ、ノイズがないか
それぞれのCFWを推している人たちからは、「この比較項目じゃ本当の良さが伝わらないだろう!!」といった意見が出るのはめっちゃわかるのですが、一旦は初めてCFWを導入するにあたって何がいいのかがざっとわかるような項目に絞りました。
比較してみた結果
比較した結果がこちらです。先に結論から述べます。
結論:個人的にはmuOSでいいかなって感じだけど・・・
muOSが遊んでみて一番私にあったCFWでした。LEDってそんなに設定しないし、なんなら途中から消してプレイすることもあるので、LED制御の幅が狭いのも全然気になりませんでした。
PortMasterが標準対応しているのがとても良いと感じました。PortMasterの中には様々なゲームや機能があり、まだどのゲームが面白いかまでは見れていませんが、今後CFWの導入するうえでは必須機能のひとつになるかなと思っています。
ゲーム音声のトラブル
ただ気になる点もありました。それはゲーム中の音声が一瞬飛ぶ・歪むような現象が起きることです。この現象はmuOSとNextUIの両方で見られました。KNULLIやStockOSでは確認できませんでしたので、スピーカーや本体の問題ではないことまでは特定できました(GB/GBC/GBAすべてで確認済み)。同様に有線イヤホンやBluetooth環境下でも音声不具合が再現できたので、音声出力そもそもの不具合だと思っています。
KNULLIやStockOSとRetroArchの設定をそろえても発生してしまうので、CFW側で何か音声のバグがあるのかと疑っていますが、そういった明確な報告もなく私の個人的な環境に限った話かもしれません。今現在は原因を色々と調査中です。今後、原因が判明したり、設定で直ったりした場合には追記しておこうと思います。
遅延の確認
遅延に関しては、それぞれのCFWで確認しましたが、ほぼ同じレベルでした。確認した方法としては、GBA実機を用いて刹那の見切り改をプレイして最速入力値を確認します。約30回くらいプレイして、おおよそ9~11程度でした。
その後、各CFWのmGBAコアを使用してエミュレートした刹那の見切り改をプレイしました。結果として、どのCFWでも12~15程度の値でした。普通にレベル1のメタナイトで負けます。まぁここまで遅延に厳しいゲームで遊ばないので影響としてはそれほど感じていません。
比較表
以下に比較表を作りました。それぞれの記号の定義は下記です。
◎:最高によい
○:普通によい
△:まぁ、こんなもんか
×:遊ぶのに支障がある
| muOS | NextUI | KNULLI | |
| CFW導入難度 | △ | ◎ | △ |
| 起動時間 | ◎ | ◎ | × |
| デザイン | ○ | ○ | ◎ |
| ファイル管理 | ○ | ○ | ○ |
| LEDの設定幅 | △ | ◎ | ○ |
| PortMaster | ◎ | △ | ◎ |
| メニューUI | ◎ | ◎ | ○ |
| ゲーム中の設定 | ◎ | △ | ◎ |
| ゲーム中の不具合 | △ | △ | ◎ |
CFWの導入に関してはこちらから【後日追加予定】
導入に関してはこちらの記事を参考にしてみてください。
※後日追記予定。
まとめ
色々遊んでみた結果ですが、結論「muOS」にしました。
しかし、比較検証の際にも記載しましたが音声のトラブルがまだ残っているので、文句なく100点をあげられるかと言ったら正直まだ微妙です。
CrossMix1.4.0の更新が今後あったら、この記事に比較項目としてCrossMixを追加しようと思います。StockOSではゲーム内音声でのトラブルがなかったので、StockOSベースのCrossMixには非常に期待をしています。TrimUI Smart Proでもかなり評判が良いCFWなので、正式対応版が来たらmuOSからCrossMixに評価が変わる可能性は普通にあると思います。
以上、身銭を切ってSDカードを買いCFWを比較した結果と感想でした。参考になれば嬉しいですし、音声トラブルに関して知見がある方は情報を頂けると本当に助かります。

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